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凋叶棕運営記。基本まったり更新。
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2024/11/25 (Mon)
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2014/01/02 (Thu)
「竹ノ花」

 自らが背負う運命と共に生きた、稗田家の三人の物語です。


・阿七の物語
  
  稗田の奉公人として雇われた若い男と稗田阿七。
  その男に、自分の身に課せられた運命を告げ、もうすぐ、この体は駄目になると告げる阿七。
  それに対しまだ命のある限り元気に生きればいい、といったことを諭す男。
  そうして、阿七は誰とも知らぬ男の元へ嫁いで行く。
  あるいは好き同士であったかもしれない二人だが、阿七は結局、自分の運命を変えるには至らない。
  男も男で、阿七にふさわしい幸せが見つかった、とその行く先を祝福する。
  
  男の心に、癒されなぬ小さな傷跡が疼く。



・阿弥の物語
  
  それから何十年かあとのこと。
  成長した男は、稗田阿弥の家の傍で働きながら、次代の阿礼乙女、阿弥の御守のような役割を引き受けていた。
  阿弥は「貴方を愛するために生まれてきた」として、男と添い遂げ、つかの間の幸せを手にする。
  が、それも長く続かず、男が仕事で留守の間に、阿弥はその命を散らしてしまう。

  二度も自分の手から離れて行ってしまう阿礼乙女に、男はただ哀悼に暮れるしかなかった。



・阿求の物語 

  それからさらに何十年か後のこと。
  年をとり、何も語らない男に寄り添うのは、男の娘である、稗田阿求。
  置いてきぼりにしてしまった琴、待たせてしまったことを詫び、何度でも転生して償うという阿求に、
  男は、愛とは貸し借りではなく、この世界は愛だけではないと諭し、
  愛という荷物を背負って生きるのではなく、自分の好きなように生き、好きなものを愛して生きて欲しいと自分の娘に願う。



まず、無粋ながら、阿礼乙女の転生には設定上百年単位の時間がかかるため、このお話はその点をついてはいけない、ということを理解しているうえで制作に臨んだことを申し添えておきます。
であっても、それであっても、このお話のドラマは実に熱いものだと思っています。
自分が愛した女、自分を愛した女 、そうして娘として生まれ変わる…そういった関係性をたどれるのは、阿礼乙女をおいて他に居なかったでしょう。

竹の花は、咲くと辺りの竹が枯れてしまい、(竹の種が大量にとれ、これを目当てに鼠が繁殖し、衛生状態の悪化や穀物に被害を与えるという説もあり)不吉の象徴と言われていますが、
花が咲けばあとは枯れるだけ。これは稗田の女も同じ、と、竹の花と咲けば散るだけの阿礼乙女とを重ねています。

転生を重荷として感じ、ただ男を愛し続けるのではなく、自分の生きるように生きてほしい、と男が阿求を諭すシーンは、つまるところ転生による記憶の継承の否定、思いの継承の否定であって、記憶をすべて共有しているわけではないという部分に合致する辺りが憎いです。


制作開始当初より、一番一代で、三番まで作ることを想定していたので、一番一番は短くまとまるよう、以て言葉選びに気を使いました。
 制作時、二つの案があり、疾走風とゆったりスローテンポの二つがあがったのですが、めまぐるしく変わる運命に翻弄される感じがよりそれらしいかなーというイメージの元、疾走風味を採択しています。

音の感じというか、三番までの繰り返しなので、曲全体の雰囲気として統一されつつも、
微妙に歌詞や裏の音の動きなどのイメージが違います。
阿七は、少し遠くから阿七を眺めるイメージで。
阿弥は、否応なしに流れに巻き込まれるように。
阿求は、もうすべて終わってしまっていて、静かに時間を刻んでいるような感じで。
極端に変えたわけではなく、あくまでもイメージですがそのような感じです。

 「どうか、私の代わりにあの人と生きて」といった表現が二度繰り返されるのは、作中でも大切なシーンになっています。
阿七、阿弥が「私の末裔よ、私の代わりにあの人を愛してあげて」と願うのですが、
その思いのみではいけない、と男が振り切って阿求を諭すのがとってもじんと来るお話ですね。
阿求には幸せに生きてほしいですね。

阿七、阿弥、阿求それぞれと男の距離感というのが違うのですが、このあたりはブックレットがそれを如実に表しているように思います。実に素敵な一枚を頂きました。

運命に翻弄されながらも愛を貫く、稗田家の物語をぜひ!
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