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凋叶棕運営記。基本まったり更新。
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2014/01/01 (Wed)

「永啼鳥」

藤原妹紅と蓬莱山輝夜の出会いから今に至るまでを描写する物語です。
原作の設定をより深く掘り下げている一冊で、タイムスケールが長いお話ですが、全体として三部に分割されています。


1.まだ幼い少女である時分の妹紅(この時の名は「紅子」)が、「かぐや姫」と出会い、同じ蓬莱人となり、長い時間の放浪をはじめるまで。


  自分の父をたぶらかさんとしている「かぐや姫」とはどんなものか見てやろうと、
  その寝室に忍び込んだ紅子は、そこでかぐや姫に「彼女自身を殺させる」という衝撃的な出会いを経験する。 

  紅子は、自分の手によって死んだであろうかぐや姫のその衝撃的な姿が忘れられず、
  混乱した思いを抱きながらも、
  最終的にそれは「憎しみ」である、と自分で自分を納得させる。

  そうして、紅子は、死なないかぐや姫に「永遠」を見出し、父に愛されたいがあまり、
  自分も永遠であれば父に愛されるのか?といった思いから、蓬莱の薬に手を出してしまう。
  しかし、待っていたのは、変わり果てた自分を排斥する家族たち。
  こうして紅子はすべてを失い、当てもなく放浪していくこととなる。




本作中で印象的なシーンをあげろと言われれば、紅子に自分を殺させるかぐや姫のシーンがまず思い浮かびます。
自分の下で血まみれになって横たわるかぐや姫に、なすすべなく狼狽える紅子。
そうして息を吹き返した後のかぐや姫が、血まみれの自分に家人を近づけまいと振る舞う一コマは、とにかく美しいの一言です。


永啼鳥において、まず一番最初に考えたのは、紅子の孤独を如何にして描写しようか?
ということでした。
何もかもを喪った彼女がぽつりぽつりと孤独に歩んでいく様子。
しかし、その胸中には、あの美しくおぞましく憎いかぐや姫への思いを渦巻かせていたに違いない…と。
そして更に想像が許されるならば、この時点で紅子はもうかぐや姫の美しさにほれ込んでいたのだと。
そういったところに思いを馳せながら、歌詞や雰囲気を考えていきました。
作中は時間的に夜のシーンが中心ですので、全体的に、「夜」のイメージが強く感じられるような雰囲気で統一しています。



時に、永啼鳥には、傍編「MOON RIVER」というスピンオフがあります。
こちらは、本編中あまり多く視点が向いていない慧音に焦点が向けられており、
主に、作中で慧音が果たした役割について描写されています。こちらもお薦めしたい次第です。




2.長い時間の果てに、幻想郷に迷い込んだ妹紅が、「かぐや姫」と邂逅を果たすまで。

  紅子が人との接触を絶って何十年もあとのこと。
  ふとしたはずみで幻想郷に足を踏み入れた紅子は、かつて自分を破滅させたかぐや姫と再び出会う。
  お前はかぐや姫なのか、と詰め寄る紅子に、かつて自分を殺させた時と同じ言葉を投げかけ、
  お互い に本人であることを確信する。
  「永遠に続く生」という死にも等しい状態の自分を何度も殺し、
  その度に生きていることを感じさせてくれるであろう紅子を、岩戸に閉じこもったアマテラスを目覚めさせる「永啼鳥」に喩え、
   お前をそんな体にした自分を憎んでいいのだ、殺していいのだ、何度でも。
   と、言葉を投げかける輝夜。 そうして、永遠に続くであろう殺し合いが始まっていく。


永啼鳥のもう一つの印象的なシーンである、「はじめての殺し合い」を集中的に描いたのが二番以降の展開です。
穢れないように、汚れないように、 生きている充実感など微塵も感じることなく育てられた輝夜は、
永遠の命を得たあとも結局その思いを変えることなく、日々を如何にして「充実」させるかを考えていたのでしょう。その結果が、蓬莱人となってしまった妹紅だなんて、ああ、なんてエゴエゴしい。

「私を憎んでいいの、殺していいの」と詰め寄る輝夜の子供のような純粋な表情とは対照的に、
自分を破滅させられた怨みを晴らすべく襲い掛かる妹紅の二人は、もう何というか、完成されています。
この辺りをどうしても描写したくて、二番のあとの掛け合いを生み出すに至りました。
歌においては一方は楽しげに、一方はシリアスになるようにお願いしました。

 
妹紅があまりにも報われない様にみえて、妹紅は妹紅で、かつて輝夜に抱いた思いの正体(一目惚れ…?)にだんだん気づいていくのだと思うのですが、
最終的に「美しい」と思っていた輝夜に「きれい」と言われてしまって、途方にくれています。
美しいと思っていて、殺したいと思っていた相手に「きれい」だなんて言われたら、どうしていいのか…
輝夜は本当に人を手玉に取るのが上手いなあと思います。
妹紅の複雑な思いは、実際とは違う読み方をさせることで出せたらいいなぁ、と思っていました。



3.現在の幻想郷にて、妹紅が、自分にとっての「永遠」とはなんであるか、について結論を出すまで。


永啼鳥において、「永遠」という言葉は多義的です。
一つは、「死なない」というかぐや姫の永遠。
二つは、権力者たる父が築いた「人が変わってもそこにありつづける権力の座」という永遠。
三つは、妹紅が見出した永遠。

では、妹紅が見出した永遠とは何かというと…これはぜひ本編を読んでいただきたいです。
これについては曲中でも描写されていません。

妹紅と輝夜の馴れ初めを、原作の雰囲気をほぼそのままの形で掘り下げたという意味で、
すんなりと入っていける一冊でした!
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